『砂糖菓子』
 その日、イメクラにやってきた杉本は、イメクラ嬢のシオリンに特にこれといったコスチュームではなく、普通の格好をしてくれるように頼んだ。そして、自分を女として扱ってくれと言う。ただ女の子同士でダベっているのを楽しみたいという。男が男の役割を捨てた時間を楽しむ・・

 自分的に、あくまでも自分的にですが、これは傑作だと思っています。まいりました。短編ってこんなことができるんだ、ちゃんとやった方がいい、と改めて思いました。本当はこういう話になるはずではなかったんです。もともとのモチーフは女装子でした。女装子というのは文字通り女装する男の子のことです。『メトロ』にはホモの教師がすでに出てます。ですが、ホモと女装子はちがいます。ホモとオカマもちがいます。オカマと女装子もちがっていたりします。私はこの違いを描き分けたいと思っています。女装する男をやはり、エキセントリックに扱うのではなく、きちんと描く。彼らや彼女たちの喜怒哀楽を。私は人形を作ったりもするんですが、顔は人間の化粧品を使います。使うということは買いに行かなければならないのです。普通の成人男性がネイル物や口紅やマスカラを買う時、レジでかく冷や汗って普通の人はわかんないでしょう。その気持ちをねえ、やってみたいんです。きっと女装子はもっといろんなところで、いろんな冷や汗をかいているんだろうと思うと、胸が痛み、胸がときめくのです。

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